誰そ彼への想い

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江戸でもっと良い夫婦のご縁があったら、郷里ごとおさらばするのみである。  そんな万太郎がおせんに暇乞いを告げて三年、江戸のどこかへ旅立った彼をおせんが待ち続けて三年、別々の場所で時間だけが等しく流れていた。 そして突然、二人の運命をとんでもない凶事が襲う、ショボい下侍と菓子屋の出戻り娘なんぞに避けようもない、当時の大衆にも衝撃を与えた大事件が。  この事件により、三河国幡豆郡吉良庄の名君、吉良義央は吉良上野介として江戸文化と歴史にその名を轟かす事となる。 ご存じ『忠臣蔵』に登場する、稀代の悪役として。
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