誰そ彼への想い

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そう、おせん父娘の頼みの綱、亀沢万太郎はこの地を治める殿様と共にいる。 この三河国幡豆郡(はずぐん)吉良(きら)庄の領主、吉良義央に同行して江戸へ発ったのだ。  吉良義央は教養人として名高く、治水や新田の開墾等も行った名君である。 馬鹿殿や暗君に苦しめられる他領の民と比べ、自分らは何て運がいいんだろうと、吉良庄領民が鼻を高くして自慢する殿様であった。 茶を嗜む義央は鶴屋を贔屓(ひいき)にし、茶菓子を頼む一方で商売を助けてもくれた。 下侍の亀沢万太郎を鶴屋へ派遣し、良い創意工夫(アイデア)を提供してくれたのである。
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