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下侍ながら絵の得意な万太郎は殿様のアイデアを描いて伝え、現在でいうところのポスターも作成し、鶴屋の商売繁盛に貢献した。
吉良庄の民は領主に倣って教養高く、美味しそうな菓子の絵に気の利いた一言を添えたポスターには大喜びし、こぞって鶴屋の菓子を買ってくれたものだ。
恩人である万太郎に鶴屋は礼として惜しみなく菓子を振る舞い、甘い物好きな下侍は店に入り浸った。
そうこうする内におせんと懇ろになり、将来を誓い合う仲となったのである。
「殿様は可愛がってくれるけどさ、俺なんか嫁ももらえない下侍だもの――」
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