誰そ彼への想い

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 しょぼくれた口調で、しょぼくれた男は出戻り娘に言ったものだ。 「――だからね、下侍なんかもうやめて鶴屋に婿入りしたいんだよ、お菓子が食べ放題だし・・・・・・い、いや、俺はただ、おせんと一緒になりたいんだっ」  両親の勧めで嫁に行った事はあるけれども、口説かれた事なんかないおせんは、かような男の熱いささやきにコロリとまいってしまう。 おかめ顔を前夫に嫌われ、石女(うまずめ)だからと家へ戻され、女としての自信を失った彼女にとっては、涙がちょちょ切れるほど嬉しい求婚(プロポーズ)であった。 おかめ顔に劣らず、しょぼくれ顔の男の言葉だからこそ信じられもした。
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