綺麗なカノジョときれいごと

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1話 殺す、ということ ー昼間の騒がしさが、嘘みたいだ。 見回りの担当である、萩原洋司は、夜の闇に包まれた学校の中で、そう思った。 もともと萩原は、見回りの担当ではなかったのだが、前任がつい最近、見回り中に亡くなったので、自分が次の担当になってしまったというわけだった。 しかも前任は、恨みを買うような人柄でもなかったのに、他殺されたというのだから、ますます夜の学校に対しての不信感が高まる。 犯人は刃物どころか、被害者の血溜まりすら残さずに殺したというのだから、まさしく怪奇事件だ。 ーカツ、カツ、カツ、カツ、カツ... 自分の足音がやけに響いて、それがまた、学校の中には自分しかいないということを思い知らせてくる。 ...さっさと済ませて帰ろう。そう思いながら、廊下を早足で進み、目の前に横たわる暗闇を少しでも無くそうと、ライトの光を投げかける。  と、廊下の先に、何か奇妙なものが見えた。糸、だろうか。  近づいてみると、それが糸ではなく、赤いリボンで、しかもそれが廊下一面に、びっしりと張り巡らされているのがわかった。生徒のイタズラだろうか。  ーにしても、何でリボンなんか...「勘弁してくれよ...」と言いながら、萩原は、目の前のリボンをどかすため、一番近い一本に手をかけて、ぐいっと引っ張った。
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