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ー校舎の、屋上へとつながる階段。そこに座り込む少女と、その傍らに立つ少年がいた。
少女のツインテールの髪の毛の先は、本来の色である黒から赤へと変わり、質感も髪の毛のそれではなく、リボン状になって、校舎中に張り巡らされていた。
少女は頭を膝の上に立てた腕に乗せて、じっと目をつぶって、何かを探っているようだった。
少年は、そんな少女の様子をうかがうように、じっと少女を見つめていた。
ーそして、見回りが、リボンをぐいっと引っ張った瞬間、少女が目を開けた。
非常灯と、開け放たれた屋上への扉から差し込む、僅かな月の光だけしか明かりと呼べるものがない暗闇の中でも、はっきりとわかるくらいに恐ろしく整った顔が、綻んだ。
ー心から嬉しそうな、楽しくてたまらなそうな笑みだった。目元の黒子が、顔の動きに合わせて上がった。
「かかったよ」
少女は、少年に、囁くような声でそう伝えた。少年は頷き、意を決した表情で走り出した。
...その汗ばんだ手には、僅かな光を受けて、銀色に光るもの...カッターナイフが、しっかりと握りしめられていた。
ー少女が、その背中を見送りながら、これ以上ないくらい楽しそうに、美しい顔をさらに綻ばせた。
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