綺麗なカノジョときれいごと

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 ー萩原は、ただただ、恐怖と驚きで動けなかった。...まあ、恐怖や驚きがなくても、1ミリも動けなかっただろうが。  萩原の体は、今、頭からつま先に至るまで、赤いリボンでギチギチと固められていた。  ...意味が分からなかった。張り巡らされていたリボンを引っ張った瞬間、そんな仕掛けがあるようには見えなかったのに、引っ張ったリボンが花開くように裂けて、萩原の体を縛り上げたのだ。それは一瞬で、萩原に抜け出す暇さえ与えなかった。  ー今、この校舎内にいるのは、自分一人のはずだ。ということはつまり、朝になって誰かが見つけてくれるまで、自分はこのままの状態で居続けなければならないのだろうか。そう思うと、体に怖気が走った。  と、そんな萩原の耳に、音が聞こえた。d誰かが、こちらへ歩いてくる靴音だ。...誰か、残っていた教師でもいたのだろうか。そんなふうには見えなかったが、まあ、この際だれでもいい。とにかく、助けてもらうのが先決だ。 「だ、誰か!すみません、生徒のイタズラか何かに引っかかってしまって、動けないんです!助けてください!」  萩原がそう叫ぶと、足音は真っ直ぐこちらへ向かってきた。そして、その「誰か」は、萩原の背後で止まった。「誰か」の手が伸びてきた。
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