【2000字掌編】歴史書に、僕の悲鳴は残らない

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「反革命の始まりだ、我が君」  立ち止まった彼は僕を解放し、礼節をもってひざまずく。  警官が包囲する中、ロベールは拳銃を捨てた。自らの役目を終えたように。  僕は全てを悟った。  彼が市庁舎を襲ったのは僕を表舞台に出すため。  拉致未遂に遭った僕が、居ないはずの王族として国中に知れ渡れば、革命で奪った権力に揺り戻しがくる。  追い風を得た貴族勢力は武器を取り、数えきれない残酷な事件が市民を襲うだろう。    幻想の栄光を信じる、哀れなロベールが警官に連行されてゆく。  憤りを隠せない僕にも、幾人かの警官が近づいてくる。
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