『# 手をつなごう』

タクヤ

　なんだか知らないけど、嫌な世の中だけどみんなそれぞれに幸せを見つけていて、三ヶ月独り身のおれに「喧嘩売ってる？」みたいな感じになってる。
　タグを辿って行けば、同僚だろう人たちと両手を掲げてる数人の人達が『# 最高の仲間と』のタグ。それ以外にも『# 可愛い我が子』のタグに幼稚園のスモックが少しだけ写りこんだ小さな手が友達か兄弟で写っていたり、どう見てもジジババやん、って手が相手を愛おしそうに包み込んでいたり。

　いいなぁ･･･。俺も誰かと手ぇ繋ぎたいなぁ。そんな事を思いながら午後の仕事に取り掛かる。

　そしてそんな日に限ってクレームが多かったり後輩のとんでもないミスが発覚したりするのだ。

「タクヤ、悪いが今日残業できるか？」

　主任が申し訳なさそうに声をかけてくるけど、まぁおれは今フリーですし？残業代出るならいくらでも、と笑ってみせた。

　ヘトヘトになって仕事を終えたのは既に日付が変わる頃で、明日から一週間のリモートも決まったしまぁチョンチョンかな。

　相も変わらずコンビニ飯を買って家路を急ぐ。ついでにビールなんかも買っちゃったりして。

「兄さん明日休みですか？ええですねぇ。ゆっくりしたらええですよ。また疲れんの目に見えてますやん」

　苦笑混じりにお釣りと共にかけられた声に疲れた顔してんのかななんて見当違いな事を思う。

　そうして家に帰って風呂入れて飯食ってちょこっとゲームして。
　ふと気がつく。そういえばアイツのSNSに手の写真載ってたなぁって。

　ほんの思いつきで自分の手のひらを撮ってみる。そして何かの番組で「手のひらはアップしちゃダメ」みたいな事言ってたと思い出し、グッと拳を作る。

　それから『# 手をつなごう』の後に『# 繋ぐ手が無い』と付けてコメントに『フラれたぁ』と一言添えておく。

　さて、明日からのリモートはオンラインの時間は短いけど実質出歩かなくちゃならないから暇ではない。
　ゲームも飽きたし、風呂が入った頃合いだし、そろそろ寝ますか。