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そんな授業が始まってしばらくボーッとしてたらポロンとスマホが着信を知らせてくる。
こんな時間に鳴るって事はSNSだろう。とはいえジョンとエディのケンカにもマーティンが仲裁するのもなんにも興味が無いし、先生は黒板に下手くそなアルファベットを書いていてこっちに背中を向けてるし、とほんのちょっとだけだと覗いてみる。
フォローしてる絵師さんが珍しく写真をアップしていた。
それも『# 手をつなごう』と『# 好きな人と』のタグをつけて。
その後には改めて『私絵師だった』と爆笑してるスタンプと共に見つめあって手を繋いでいる男女の淡い色合いのイラストを載せていて、なんだか泣けてきた。
よく考えたらイクヤとの写真なんて撮ったこと無い。自撮りは得意じゃないし、下心ありありだから写真が欲しいなんて絶対言えない。
―――いい機会なんじゃないか?
だってイクヤは大学進学を希望してるし、十二月になってしまえばセンターやら模試やらで忙しくなるんだし、年が明ければ三年生は自由登校になる。
家庭の事情とはいえ就職する俺とは全く接点が無くなるんだ。親友だ、なんて自己満足してないで、一緒に写る写真の一枚くらい思い出にあってもいいんじゃないか?
SNSにアップするためだって言えばイクヤだって納得するはずだし、面白がってくれるかもしれない。
その後授業が終わるまで『# 手をつなごう』で検索していくと、飼い猫と人差し指で手を繋いでる写真や子どもと手を繋いでる写真、五人の女性が後ろを向いて繋いだ手を掲げながらジャンプしてる写真やどう見てもお年寄りの手が繋いだお年寄りの細い手を大事そうに包んでいる手の写真なんかが後から後から出てきて、たどり着いた一枚の写真はタグに『こんな時だから 大切な人と』というコメントが付いていた。
「何見てんの?ってかカミセンが睨んでたけど」
いつの間にかチャイム鳴ったんだろう。イクヤが横から俺のスマホを覗き込んでいた。
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