ナツキとイクヤ

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 コクンと一つ喉を鳴らして、バクバク鳴ってる心臓はなかった事にして「なぁ」とイクヤを見上げる。二年から同じクラスだけど、この角度って初めてかもな。どっから見ても、マスクをしてても、いい男だよな。 「コレやってみねぇ?」  俺は最初だろう、タグ付きの写真を見せて、それから猫と一緒のもついでに見せた。 「見てみたら異性って決まってるわけじゃないみたいだし、ほら、高校の思い出の一つって言うか・・・」  どんなに取り繕ったって、お前と写ってる写真が欲しい。言えないけど俺は欲しいんだ。頼むから、お願いだからYESって言え。言ってくれ。頷くだけでもいいから。 「へー・・・面白そうじゃん。てか何焦ってんの」  クスクスと笑いながら「撮ろうぜ」と手を差し出してくる。  もうすぐ初雪が降る時期だからといっても、別に寒いわけじゃない。寒いわけじゃないのに俺は緊張に震える手を差し出してそっとイクヤの手に重ねる。  机の上で重なる手を二人で同時にスマホに収める。初めてのイクヤの写真だ。  その場のノリで『# 手をつなごう』の後に『大親友と』というコメントを付けてアップする。  カシャリとシャッターを切る音がして音の鳴るほうへ視線を向けると、イクヤが俺の顔を撮っていた。 「すっげぇ幸せそうな顔してんのな。なぁ、この後マック行くだろ?その時さ、ちゃんとOKしてくれな」  離れ離れになる後数ヶ月後、その時には笑顔で送り出してやりたい。  寂しいとか悲しいとか、そんな気持ちが吹っ飛ぶくらいの笑顔で。  後日、イクヤのSNSにイクヤ側から撮った写真がアップされていた。 『# 手をつなごう』と『# 大好き』のタグの後に『これからもよろしく』のコメントを付けて。
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