アオイとヨウスケ たまにノン

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アオイとヨウスケ たまにノン

 そのニュースが俺の耳に入ってきたのは事が起きてから僅か数分の事で、その時俺は大学のA棟からB棟へ帰宅準備のために移動していた時だった。  南門の僅か数メートル先で乗用車が歩行者に突っ込んだ、という思えば凄惨な現場だったはずだ。でもその時の俺は見知らぬ誰かを悼むよりまず、後悔した。 「今日は一緒に飯食おうぜ」と近所に住む高校生のアオイを誘ったのは今朝の事。たまたま遅刻ギリギリで家を飛び出したアオイに「乗ってくか?」と声をかけると、免許を取って一年半の俺の運転に嬉しそうにしていた。  まるでデートみたいだ、と言って「制服じゃ味気ないなぁ」と不貞腐れていたアオイの機嫌を取ろうと必死だったのだ。  テニス部のアオイが「じゃあ、部活休む」と満面の笑みで答えてくれたのは、つい数時間前のことなのだ。  他の誰かより、アオイが心配だった。居なけりゃいいと心から願った。 「アオイ!!」  倒れている人を、アレじゃない、コレも違うと目を走らせ、もしかしたら見物人の中にいるのか?とふと目を上げかけた時、見慣れたコートが赤く染っているのが見えた。  我を忘れて必死に救助している人達を押しのけアオイに駆け寄る。  ―――その後の事は記憶にない。  気がついたら病院の処置室の前のベンチでぼんやりと座っていた。  ノンが目の前で怖い顔をしている。ノンはアオイの年の離れた姉で俺の先輩で、一度は結婚まで考えた人。その時から俺はアオイが好きだったしアオイの傍を離れたくなかった。だからノンと一緒になろうと画策したのだ。「ふざけんな」と一言で一蹴されたけど。その時から俺とアオイを陰ながら応援してくれている、大切な大切な人。 「アンタがそんなんでどうするの!まだ目が覚めてないの?!もう一発ぶん殴られたい?!」  言うや否や振り上げた手が思いっきり振り下ろされる。病院の廊下にバチーンという音が響き渡り、俺はようやく目が覚めたような気分だった。 「痛てぇ・・・」  アオイが処置室に入ってからもう二時間は経つ。
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