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とその直後、『レイメイFS』の背後の岩陰に潜んでいた、ヴェルージ=ウォーダの『シデン・カイXSーTS』が身を乗り出し、超電磁ライフルを一連射する。
先頭の一機が直撃を喰らって爆発。そして後続していた二機の内、一機が左大腿部を撃ち抜かれ、もんどりうって転倒した。
だが残る一機は健在だ。前を行く僚機の転倒で、大量に舞い上がった砂煙を突っ切り、間合いが詰まった『レイメイFS』に、“ポジトロングレイブ”で上段から
斬りかかって来る。
しかしサンザーは慌てない。右手一本で『レイメイFS』が握る、大型十文字ポジトロンランスをザクリとひと突き、そのまま脇へ投げ捨てる。その間に大腿部を撃ち抜かれていたBSIが、重力子ホバリングと衛星の重力の小ささを利用して、強引に機体を立て直し、攻撃を続行しようとする、だがサンザーはそちらには眼もくれず、降下して来た新手の所属不明機の一団に、機体を向けた。その背後で機体を立て直したばかりの敵が、サンザーを援護するヴェルージから、とどめの銃撃を喰らって爆散する。
そして胸部から上を失った敵のBSIユニットが、衛星の地表に崩れ落ちた時にはもう、サンザーの『レイメイFS』は新手の敵の中へ突入していた。
「おおおおおおお!!」
敵集団の真ん中で、大型十文字ポジトロンランスの端を握って大きく旋回。サンザーの方から突っ込んで来るとは思わなかったのか、反応の遅れた二機が、腹部を切り裂かれて動かなくなる。
しかもサンザーの鑓から逃れて、距離を置こうとした敵機には、荒れ地の岩陰に潜んだ、ヴェルージやサンザー配下のBSI部隊から次々と狙撃されて、破壊されていった。
しかしやはり敵の数は圧倒的である。まるで雨が降るように、新手の敵BSIが大量に降下して来はじめる。今度はアーザイル軍の『イカズチ』や、アザン・グラン軍の『ハヤテ』の姿も多く見られる事から、ウォーダ軍の第35艦隊や、第6・第33合同艦隊と戦っていたBSI部隊も、駆けつけて来たのだろう。彼等の中には敵将サンザーを討ち取って、巨大な名声と莫大な報償を求める者も多いに違いない。
「これはまた凄い人気だな。誰か有名スターでも、来ておるのか?」
わざとらしくとぼけて見せるサンザー乗せた『レイメイFS』は、ポジトロンランスを、ずん!…と衛星の地表に突き立て、仁王立ちになる。これを見ていたヴェルージ=ウォーダは、自分達の超電磁ライフルの銃弾が、ほとんど尽きている事から、配下のBSI部隊に命じた。
「ここから先は、冥府の門をくぐるまで格闘戦だ。みなサンザー殿のもとへ急げ」
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