第20話:薪の上に臥して苦き胆を嘗める

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  「サンザー殿!」  『ハヤテCG』を斬り捨てた『シデン・カイXS-TS』に乗る、ヴェルージ=ウォーダが通信で呼び掛ける。 「ここは我等が血路を開きまする! サンザー殿はウーサルマ星系まで後退され、第二次防衛線の指揮をお取り下さい!」  サンザー率いる第6と第33艦隊のBSI部隊は、もはや残り百機を切り、ヴェルージが率いて来た、第35艦隊のBSI部隊も、残存機はすでに四十を下回っていた。対するアーザイル軍とアザン・グラン軍、そして所属不明艦隊のBSI部隊の数は、ここにいるだけでもまだ四百を越えている。敵艦隊は一部の空母を残し、ウォーダ艦隊の追撃に入っており、そのまま後方のウーサルマ星系を襲撃。これを抜いて、ヤヴァルト宙域を撤退中のノヴァルナ率いる、セッツー宙域遠征部隊を目指すつもりだ。 「それはこちらの台詞だ、ヴェルージ殿。貴殿こそ、まだこの先―――」  モノトーンBSIを穂先の斬撃で両断したサンザーが、そう言いかけた時、ヘルメットのスピーカーから、ヴェルージの「うぐゥッ!!」という呻き声が聞こえた。機体をヴェルージの居る方向へ振り向かせると、モノトーンBSIのポジトロングレイブが、『シデン・カイXS-TS』の脇腹を、背後から刺し貫いている。 「ヴェルージ殿!!」  『シデン・カイXS-TS』を突き刺したBSIユニットは、ヴェルージ配下の『シデン・カイ』から、怒りの斬撃を浴びて破壊された。しかしその『シデン・カイ』も、突撃して来た複数のモノトーンBSIの薙刀に、次々に串刺しにされて爆発を起こす。  その間にヴェルージの機体はよろめきながらも、敵のBSIをクァンタムブレードで袈裟懸けに斬り捨てた。だが敵に突き刺された箇所はコクピットであり、乗っているヴェルージが深手を負っているのは、ほぼ間違いない。  自分達の司令官を守ろうと、『シデン・カイ』やその親衛隊仕様機が、次々と集まって来る。これに当然敵も集まり、大乱戦が発生した。  この光景に、ヴェルージの救援に向かいたいサンザーであったが、近接警戒センサーが無数の敵の接近を警告して来る。振り返れば百機を超える新手の敵。おそらく居残っていた敵の空母部隊が、直掩用に残していた部隊も全て、投入して来たのだろう。この圧倒的な光景にサンザーの頬の筋肉が緩み、口角が自然と上がる。 「よかろう。これで冥府への道中が、ますます賑やかになるというものよ」  
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