第20話:薪の上に臥して苦き胆を嘗める

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   ところが、アーザイル/アザン・グラン連合軍がウーサルマ星系へ侵入し、星系首都である第二惑星エヴェルスに向かうと、ウォーダ側に降伏の意思は、全くない事が示されていた。  そこにはウーサルマ宇宙城を中心に、サンザーの第6艦隊に所属していた空母部隊の一部と星系防衛艦隊、さらにセークモートン星系から撤退した残存部隊が、各惑星の公転軌道上に広く展開して、待ち受けていたのだ。  そして防衛部隊の指揮を取るガンセー=カルガンからは、侵攻軍に対してきっぱりとした、降伏勧告への拒否の返答が行われた。  ガンセーは第6艦隊の参謀長だった男で、サンザーが最後の戦いの前に、第6艦隊の空母部隊の一部と共にウーサルマ星系へ引き返させ、第二次防衛線を強化するよう命じた将官である。  さらにウーサルマ宇宙城の城代を務めるダータルス=フィーダも、ウォーダ家がミノネリラ宙域を支配するようになるまで、サンザーの直卒BSI部隊“ハンター中隊”の、副隊長に任じられていた猛者であった。今も城に配備されていたBSI部隊を率い、『シデン・カイXS』ですでに出撃している。 「聴け、天下静謐を拒む者ども! サンザー様を失ったとて、我等に刻まれしその志は、全く揺らぐ事は無い! 総員が死兵となっておまえ達を阻むだろう!!」  ガンセーの強い宣言によって始まった“ウーサルマ星系の戦い”は、サンザーが生涯を閉じた“セークモートン星系の戦い”に劣らず、熾烈なものとなった。  アーザイル/アザン・グラン連合軍と所属不明のモノトーン艦隊は、サンザーの生前の目論見通り、ここまでの戦闘で宙雷戦隊の損耗率が高くなっている。しかも戦力不足を補う役目を担うはずのBSI部隊は、相当数がサンザーとの戦いに拘束されていたため、数が揃っていないまま、ウーサルマ星系防衛軍との戦いに突入。ウォーダ軍は、宇宙城周辺に守備戦力を集中させるのではなく、星系内に広く展開させた宙雷戦隊と、BSI部隊による波状攻撃で連合軍を翻弄。サンザーの遺志を継いだ将兵達は、見事にその役目を果たした。  ウーサルマ星系を抜いて、ノヴァルナの直卒部隊を襲撃する、アーザイル/アザン・グラン連合軍の、挟撃計画は時間切れとなり、ここまでの戦いの戦略的価値を失った連合軍は、目標をウーサルマ星系の占領に変更。腰を据えてウォーダ軍防衛部隊を排除しようとする。  だがそこへもたらされたのは、意外な情報であった。ヤヴァルト宙域を撤退中のノヴァルナ部隊が、針路を自分達連合軍がいる方へ向けたというのだ。  
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