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「今、どこにいる?」
私は、心の中で問いかけた。
目の前には夜の暗闇に煌々と赤く燃える薪の光が見える。
そのそばに立つ見張りの兵士たちはただ静かに時を待っている。
「今、どこにいる?ちゃんと生きている?」
再び私は心の中で問いかけた。
お前は大事に育ててきたから、自然の中で生きる術を知らない。
苦労しているのだろうか。
それともお前をかくまってくれる誰か優しい人に出会えているといいのだけれど。
私はあたりを見回そうとしたが、首を動かすことができなかった。
そもそも磔にされているため、体は動かせない。
手足の感覚はもうなくなっている。
まもなく決められた時がきて、刑は執行される。
今、目の前にある景色が最期に見る景色となるのだろう。
執行の時を待つ兵の姿。
もっと違う景色がよかった。そう考えて、私は目を閉じた。
思い浮かべよう。
あの子の姿を。
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