夕暮れの観覧車

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彼の収入が安定していなかった頃は、自分の生活を切り詰めてでも彼を食べさせてあげた。 学生時代はいくつものバイトを掛け持ちし、社会人になってからも副業でコツコツお金を貯めた。 同期の女の子たちがちょっと高い化粧品を買って、ブランドのバッグを持って、ランチに出る間も、私は学生時代から使い続けるプチプラコスメに全身1万円にも満たないコーデ、手作りのお弁当で我慢していた。 家賃が払えなくてアパートを追い出された彼が転がり込んできてから、ダラダラと続けた同棲生活。 くたくたになって仕事から帰ってきて、家事に副業にと勤しむ私の傍で、譜面に向かう彼に一度も不満を抱かなかったかといえば嘘になるけれど、お金を稼いできてもらうことよりも、好きなことをしてキラキラ輝く彼をそばで支えることの方が大事だった。
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