夕暮れの観覧車

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幸せだった。 彼と一緒にいられるならそれでよかった。 「…はぁ。仕事だって言ってんだろ…」   大好きな智哉の声。 いつからだろう、こんなふうに言い合いばかりするようになったのは。   彼のバンドのデビューが決まって、いつもガラ空きだったライブハウスのチケットが売り切れになるようになって、テレビや雑誌にも取り上げられるようになってから、彼は一気に忙しくなった。 仕事はもちろんのこと、業界関係者との付き合いもあって彼はよく家を空けるようになった。 そのうち、けじめをつけると言って家を出て行った。 彼がいなくなった1DKの部屋は広くて寂しくて、私はいっそう仕事にのめりこむようになった。
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