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それからしばらく会うことはなかったが、ある日、直美が車を運転して通りかかったとき、その親子を向こうの方に見つけた。
すれ違ったときの表情は一瞬だったのでわかりにくかったが、あの男の子はまた肩からぎゅうぎゅう詰めのショッピングバッグをかけさせられていた。
“かけさせられていた”と直美は思った。
理由などない。
「あんなのおかしいよ!」
車の中で大声で叫んでいた。
3度目にその親子と出会った時はもう冬になっていた。
相変わらずお母さんはベビーカーを押していて、冬物のコートを着てショートブーツを履いていてあたたかそうに見えた。
直美は自転車だった。
すぐに、男の子に目をやる。
男の子は俯いて歩いていて、直美の方を見ない。
冬物らしい上着は着ていたのでそれだけは一安心できた。
が、両肩にはショッピングバッグが掛けられていた。
両肩?!
すれ違って、少し通り過ぎた直美だったが、自転車を止めてその親子の方へ走りよって行った。
「あの、お母さん、ごめんなさい、いきなりお声をかけて…。何度かお見かけしているんですが、どうしてこんな小さい子に荷物を持たせているんですか?とても辛そうですよ!」
するとそのお母さんは、直美の言葉に驚いて男の子の方を見た。
男の子はそれに間に合わせるように瞬時に笑顔になっていた。
なぜなの?直美はわからなかった。
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