3度すれ違っただけなのに

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お母さんは、察しがついたように話し始めた。 「あの子は耳が聞こえないので、話せないんです。私が大変だと思って僕が持つと言ってくれていたんですが、そんなに辛そうだったとは、気づきませんでした。親としてダメですね。主人が亡くなって落ち込んでいた私を気遣い学校を休むようになって。これからは気をつけます。ご親切にありがとうございました」 直美はハッとした。 勝手に虐待なんじゃないかと決めつけて声をかけていたことが恥ずかしかった。 直美は男の子に駆け寄り思わず抱きしめていた。男の子が戸惑っているのも構わずに、なんて健気な子なんだろうと思ったら自然と抱きしめてしまったのだ。 直美はその子の温もりを感じながら何だか嬉しくなった。 すると直美は突然「あっ!」と声をあげたかと思うと自分の自転車の方へ走り出した。 自転車のカゴの中から買って来たばかりの肉まんあんまん5個入りを手に取り戻ってくると男の子に手渡した。 男の子は、ニコニコして受け取ってくれた。 お母さんも頭を下げていた。
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