(一)

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(一)

「お父さん、あなたは、今、どこにいますか?」  小松美代は砂浜で海を見つめながら、そう呟いた。  遠くには養殖場や、船の往来が見えていた。  右手からやってきた小舟が左手の方へ去り、手前の海岸線に消えていくと「ミヨさん」と声をかけられた。  美代が振り向くと小松有美恵が立っていた。 「なにかあったんですか?」  息を切らせながら有美恵が言うと、美代は「ううん」と首を振った。 「ゆみえさんこそ、どうかしたの?」 「ミヨさんの携帯が鳴っていましたよ」 「本当?」 「ごめんなさい、勝手に持ってくるわけにもいかないと思って、置いてきちゃいました」 「ううん、いいの。教えてくれてありがとう」  そう言うと、美代は砂浜を陸地に向かって走りだした。有美恵もその後に続いた。 (続く)
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