ラ イ カ

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三周めも、もう三分の二以上を過ぎた頃だった。 ライカは暑いということに気付いた。 それは太陽の光によって宇宙船の温度が上がっていたからだった。 しかしいくら太陽の光に晒されようと、今までの二周は無事だった。 三周めにして問題が起きたのは、断熱材部分の故障が原因だった。 船内の温度はどんどん上昇していく。 ライカはこの暑く、狭い空間から逃れようと必死にもがいていた。 三周めを終える頃、宇宙船内の温度は四十度となっていた。 それは地球上の技術者達にも伝わっていた。 宇宙船内の温度が暑すぎることも、それによりライカがパニックに陥っていることも。 しかし、地球上にいる技術者達に、為す術はなかった。 すぐに高度数百kmの宇宙へ行ってライカを助けることも、地球上からの遠隔操作で何かをすることも出来ない。 技術者達にできるのは『観測する』、それ以外には何もできないのだ。 ライカの宇宙飛行は一週間の予定だった。 毎日決まった時間にエサが出される以外は、何も口にすることができない。 ライカはこの暑さの中 水すら飲めずに、流れのまま地球をまた一周し始め、技術者達との通信可能エリアから離れて行った。
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