ラ イ カ

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宇宙空間で地球周回軌道を回る宇宙船とって、太陽の光の当たる場所の表面温度は百度を超える。 逆に太陽の当たらない所ではマイナス百五十度程にもなるそうだ。 そのような中で宇宙船の断熱材部分が壊れたともなれば、犬という生き物が正常で居られる可能性はほぼない。 船内の温度が上がっていく中で、ライカは昔の事を思い出していた。 人間で言うところの一年程前まで、ライカは野良犬だった。 毎日食べれるものを探し、落ち着いて休める場所もない。 事故や飢え、病などの様々な要因によって突然に死ぬことも考えられる状態、そのような悪環境がライカにとって当たり前だった。 それがある時、人間に捕まったことで変わったのだ。 人間に連れられて着いた場所では、狭い所へと閉じ込められたり、大きな音を鳴らされたり、ライカにとって迷惑ではあったが、野良犬であったときよりも生活は良くなっていた。 何よりも、毎日少量でも食べられるものが貰え、食べ物の心配をしなくて良くなったのだ。 人間が『訓練』と呼ぶ事をしていた時、ライカは(むち)で叩かれることも多少あったが、それ以外の時は人間達はライカに優しく接していた。 頭を撫でられながら、ライカは今までに感じたことのなかった幸福を感じていた。
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