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「ライカ、おいで。」
そこにいる人間達が、やたらと一匹の犬を大切にしていた。
その犬の名はライカ。小柄なメスの犬だった。
厳しい訓練の末に今日、宇宙へと飛び立つのだ。
これはまだ、人間が宇宙へ行くよりも前のお話。
1957年の秋のこと。
灰色の視界の中で、青い空や黄色い蝶だけがぼんやりとライカの目に写った。
犬は視力があまり良くなく、見える色も限られている。
そんな中でも、青と黄色だけはライカにも見えていた。
しかしそれもすぐに閉ざされてしまった。
人間達によってライカは体に様々な機器を取り付けられ、何か狭い所へと閉じ込められてしまったのである。
正直ライカはまたか、と思っていた。
今までも長い間、狭い所で生活させられていた。
人間達から言わせるとそれは『訓練』であったのだが、ライカにはその意味はわからなかった。
ライカは鼻からため息を吐いた。
目の前にはエサ入れと、小さな小さな窓。
そこから見えるのは僅かな空と、今まで世話をしてくれてきた人間達だった。
ライカがそこに閉じ込められてから、約二日半後の事だった。
ふいにガタガタと音がすると、閉じ込められていた空間のどこかが開いた。
それはライカの頭上の小さな空間だった。
そしてその空間から、ライカの目の前のエサ入れに水が注がれた。
ここ数日、ゼリー状のエサしか口にしていなかったライカはその水にとても喜んだ。
その後また閉じ込められるライカには、小窓の向こうの人間達の悲しげな顔が写っていた。
ライカが閉じ込められたのは宇宙船スプートニク2号。
ライカを乗せて、宇宙へと打ち上げられる。
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