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翌週から倉庫にこもって旅行パンフレットの発送と在庫をチェックすることになった。もうスーツを着る必要はない。倉庫で必要なのはグレーの作業服だ。俺以外は全員時間給のアルバイトだった。そいつらの管理とパンフレットの管理が俺の仕事になった。閑な職と書くが、ここの閑職はこまごまとした雑務が山のようにあった。ちょっと注意したらすぐに辞めてしまうバイトを管理するのは気苦労ばかりで、奴らのいい加減な仕事の後始末は全て俺に回ってくる。異動希望を何度も提出したのだが、なしのつぶてだった。
不毛な仕事をするのも限界にきて、人材会社に登録をした。平順から電話がかかってきたのはそんな時だった。
「久しぶりに一緒に飯でも食わないか。麗明も会いたがっているよ」
待ち合わせた店の前で俺の姿を見た孫夫婦は唖然としていた。まあ、そうだろう。体重が十キロ近く落ちて服がぶかぶかになっている。
「病気でもしたの」
「はあ、ちょっと忙しくて」
「どんな仕事をしているの」
麗明に問い詰められて、とうとう今の状況を白状してしまった。
「かわいい子には旅をさせろ、っていうけれど」
麗明が目をやると平順がそっぽを向いた。
「そんな会社、すぐに辞めて俺の所に来い」
「いいんですか」
「当たり前だ」
麗明が勝ち誇ったように微笑んだ。
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