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【 暴走列車 】
その後、またタクシーに乗り込み、列車を追いかけた。
前方に見える列車は、既にあの問題の魔の右カーブに差し掛かっている。スピードを出し過ぎた列車は、カーブを曲がり切れず、先頭車両がフワリと左の方へ浮き上がり、片輪走行のようになった。
すると、赤い鉄橋の少し手前で先頭車両の前輪が脱線し、火花を散らして鉄橋へと突入する。
一度レールから外れた車輪は元へは戻らず、後続車両も次々ともの凄い轟音と共に、激しく火花をあげて脱線していく。
そして、1両目は鉄橋から落ち、まるでおもちゃの列車のように宙に浮き、川へ中へとザブンと入っていく。
それに続き、2両目も川の中へ。3両目は、4両目の最後部が橋の端に引っ掛かったために、半分だけ川の中へと入った状態で、4両目と同じように宙ぶらりん状態となり、辛うじて止まった。
その凄まじい光景の一部始終を、タクシーの中で目の当たりにする……。
それはまるで、映画の中の出来事のように、スローモーションで見ているようだった。
タクシーを降り、彼との思い出の場所、美野川のほとりへと出る。
そこから見た光景は、列車が無残にも脱線、川へと落下し、陸の乗った1両目は完全に水の中へと沈んだ、絶望的な姿だった。
いつも澄んでいる川の色が、少しずつ赤く染まって行くように見える。
遠くから聞いたこともないような人のうめき声も聞こえてくる……。
私はすぐに携帯電話でレスキューを呼び、そのまま力なく崩れ落ちるように地面に膝をついた。
「救えなかった……、誰も救えなかった……。陸、一人でさえも……。折角、過去に戻してもらったのに……。結局、私は何一つできなかった……。うぅぅ……」
自分を悔いて泣いた。
何一つできず、誰一人救えなかったことが、とても悲しい。
すると再び、脳の奥にあの鐘の振動が伝わり、痛みから私は両手で頭を押さえる。
そして、この過去の世界の意識も徐々に薄れていき、気を失って行った……。
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