【 時よ戻れ 】

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【 時よ戻れ 】

 ――次に目を覚ました時には、あの釣鐘の下に倒れていた。  ゆっくりと目を開け、上半身を起こすと、私の目の前にはあのお坊さんが立っている。 「大丈夫ですか? おかえりなさい。無事に帰って来れたようですね」 「今……、いつですか……?」 「5月8日土曜日、午後7時ですよ」  このお坊さんが言う通り、ピッタリ1時間だけ過去へ戻っていた。 「私、過去から戻って来れたんですね……」 「ええ……」  お坊さんが左手を差し出し、私の手を取り、体を起こしてくれる。 「過去は変えられましたか?」 「い、いいえ……、結局、変えることはできませんでした……」  それを聞いたお坊さんは、少しやさしい表情で私を見た。 「そうですか。でも、あの列車事故、死傷者は50人程だったそうですよ」 「えっ……?」 「ある女性が、あの列車に乗らないで欲しいと前の駅で叫んだそうです。それを信じた人たちが列車を降りていたようですよ」  私は、その言葉を聞き、お坊さんにお礼を言うと、思わず駆け出していた……。  あの陸との思い出の場所へ……。
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