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【 美野川線列車脱線事故 】
今から1ヶ月程前、4月12日月曜日、午前7時56分。
この美しい美野川の鉄橋で、列車の脱線事故があった。
4両編成の黄緑色の列車が、美野駅から浜口駅に向かう途中のこの赤い鉄橋で脱線し、川へ転落してしまったんだ。
この鉄橋を渡る直前の右カーブをスピードを上げて進入し、先頭車両が曲がり切れず左へと傾き、鉄橋に差し掛かったところで脱線し、そのままこの美野川へと落下した。
1両目と2両目は川の中に完全に水没し、3両目の半分ほどが川の中、4両目の最後尾付近が鉄橋の端に辛うじて引っ掛かり、3両目・4両目は橋から宙ぶらりんの状態だった。
混雑時の事故だったため、死傷者は100人を超す大惨事となってしまった。
スピードを上げた原因は、度重なるオーバーランによる時間の遅れ。
まだ不慣れな運転士が、駅で正しい位置に停められず、何度も停め直したことと、4月の新入生・新入社員などの乗客がいつもよりも増えて、乗ることをためらい、乗客を乗せるのに時間がかかってしまったことが重なってしまった。
このニュースは、『美野川線列車脱線事故』として大きく全国ニュースでも取り上げられ、すぐに私の耳にも届いた。
でも、まさかこの列車の中に、彼が乗っていたなんて、思いもしない。
――彼の訃報を知ったのは、夕方近くだった。
彼のお母さんから、私の携帯電話に連絡が入ったんだ……。
「紬ちゃん、今日あった美野川線の列車事故のことは知っているよね……。り、陸が……、それに乗っていたみたいなの……」
「えっ……、陸が……」
それから、彼のお母さんと何を話したのかほとんど覚えていない。
ただ、その時、彼にもらった婚約指輪をした携帯電話を持つ左手の震えがずっと止まらなかった。
私は膝から床へ崩れ落ち、溢れる涙を止められない……。
その場から動けなくなり、携帯電話を左耳に当てながら、ずっと声を出して泣いていた……。
「り、陸……、陸、どうして……、どうしてなの……」
窓から差し込む夕日が、私の小さく丸まった影を悲しく床に落としている。
あんなに大好きだった陸に、もう二度と会うことができなくなった……。
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