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【 不思議な空間 】
そのお坊さんに、陸が列車事故で亡くなったこと、今日彼と結婚式をあげる予定だったこと、色々なことを話していた。
今までのことを話終わった頃、そのお坊さんは穏やかな顔で、こう話始めた。
「それはお辛いですね。何か私にお手伝いできることがあればしてあげたい」
「こうやって、お話を聞いて頂けただけで、少し心が落ち着きました……」
お坊さんは、私の肩を1回ポンと軽く叩くと、こう言った。
「もし、あなたがあの列車事故当日に戻れるとしたら、どうしたいですか?」
「えっ? あの日にですか……?」
「ええ。あの日に戻れるとしたら、戻りたいですか?」
「戻れるものなら、戻りたいです。でも、それは現実的に無理なことなので……」
すると、お坊さんは、一度大きく息を吸い込み、フゥーッと吐くと、目を少し大きく開き、私に問いかけた。
「私があなたをその日に戻すことができると言ったら、どうしますか? あなたは、戻りたいですか?」
「えっ? は、はい……、戻れるものなら……。でも、そんなことできるんですか……?」
「できますよ。ご安心なさい」
そのお坊さんはそう言うと、また目を細めてやさしい笑顔になった。
本当にあの日に戻ることなんてできるんだろうか。
半信半疑だったが、そのお坊さんの言う通り、付いて行くことにした。
しばらく歩いて行くと、お寺の本堂の横にある、大きな『釣鐘』が見えてきた。
その釣鐘には、グレーの瓦屋根があり、赤茶色の12本の太い柱で支えられている。
土台が1m程石で積み上げられて高くなっており、鐘を撞くには、石で出来た階段を上っていく必要がある。
鐘の大きさは3m近くあるだろうか、表面に鐘独特の丸いボツボツのようなものが付いており、見た感じ青銅でできているようだ。
梵鐘を撞く『橦木』は、長さが2m以上、直径が50cm程の太い丸太で天井から縄で吊るされている。
お坊さんの後に付いて、その釣鐘まで行くと、こう静かに語り出した。
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