【 陸を助けたい 】

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【 陸を助けたい 】

 現在、列車はあの時の時間では、美野駅の手前にある町田駅にもうすぐ到着するはず。  タクシーが町田駅に到着すると、すぐに駅員に説明し、駅のホームへと走る。  しばらくすると、列車が町田駅のホームへと入って来た。  だが、報道通り、やはり運転士は、かなりのオーバーランをしてしまう。  ゆっくりと車両を戻している。  その間も次の駅への到着時間が遅れて行く。  駅にいる乗客もざわついている。  列車の扉が開くと、乗客が入れ替わる。  しかし、満員状態で乗るのを躊躇(ちゅうちょ)している乗客がいる。  私は、先頭車両にいるはずの陸を探した。  だが、列車の中は満員で陸を見つけることが出来ない。 「陸! 陸! 降りて! この列車を降りて!」  私は咄嗟に、叫んでいた。  しかし、私の大きな声に、乗客が私の方へ視線を向け、益々、乗ることをためらっている。  そこへ、駅員が駆け寄ってきて、「あなた乗るんですか?」と訪ねてくる。 「い、いいえ……。乗りません……」  私は首を横に振った。  すると、駅員は、まだ乗れないでいる乗客たちの背中を必死に押す。  そして、列車の扉は閉まった……。
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