お釈迦様の気まぐれ 第二話

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「今どこにいますか?」  妻からの電話。車の行き交う音が背後から聞こえる。 「仕事中だ。ごめん。今夜の約束、行けないと思う。カナちゃんでも呼んで楽しんでくれないか。さっき、中井デンキのおやっさんが運ばれて来たんだ。いや、たぶん大丈夫だと思うけど、念のためだよ。」  カナちゃんは、妻の妹。車で15分くらいの隣町に住んでいる。妻とカナちゃんは仲良し姉妹で、お互いの子どもたちが幼い頃から子連れで泊まりに行ったり来たり、家族ぐるみで楽しい時間を過ごしてきた。  僕は内科医。地方都市の総合病院に勤務している。    夕刻になって救急車で運ばれて来た知人の容態が心配だった。軽度の脳血栓。投薬で様子を見ている。幼い頃、壊れたオモチャを魔法のように修理してくれた中井デンキのおじちゃん。 「お体に気をつけて。」  妻は、それだけ言うと電話を切った。  本当は、今夜は妻と二人で結婚記念日のお祝いをするはずだった。  朝、妻の弘子に僕から提案したんだ。 「結婚して20年。アッという間だったな。弘子のお陰で、僕は安心して仕事に打ち込めるけど、家のことはすべて任せっきりで本当に申し訳なく思っているよ。どうだろう?今夜は白川ホテルのディナーでも食べに行こうか?」  
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