第四章 前編

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 戦闘準備を整えていると、ヒーローがバイクから降りてこちらに向かってくる。  するとまさかの色合いにサカキが驚きの声を上げる。 「レッドと水色じゃねえか!どういうことだ!?」  するとレッドがこちらに声をかけてきた。 「ケケケ、驚いたカ!レッド様の登場だゼ!」  変な空気が公園を流れる。  少しの沈黙の後レッドが再び声をかける。 「おいどうしタ?レッドだゾ?」  呆れた表情でサカキが答える。 「ブルーだろお前……。なんでレッドの恰好しているのさ」 「何、ばれているだト……。完璧な変装のはずなのニ」 「いや、喋り方でわかるから!」 「盲点だっタ……」  黒豆団のヒーロー呼び寄せ術も子供騙しだったが、  ヒーロー側もまた子供騙しであった。 「なんでレッドなんだよ。おちょくっているのか?」 「そんなわけないだロ。その逆だよ逆、レッドをリスペクトしてんダ。 もうあの人は戦える状態ではなイ。しかしリーダーがいないというのは色々と困るだロ。 そこで一番強くて、レッドにふさわしい名前の"赤田"である俺がレッドに襲名したわけサ!レッドっぽく火も使えるゼ!」 小さな火を吹いて見せたところで、冷静にメイが突っ込む。 「あれ、あんた本名公開してたっけ」 「しまっタ!」  今から本当に真剣な戦いが始める前なのだろうかと、アヤは心の中で謎の心配を始めた。  そしてレッドことブルーに目が行っているが、後ろには水色の姿があることにまだ誰も触れていない。  どうしても気になるのでアヤは声をかけてみた。 「あの、後ろにいるのは、本物の水色さんですか……?」  少し動揺した声だが、いつもより優しめの声で水色が答える。 「はい、その節はご迷惑をおかけしました。これから気持ちを切り替えてヒーロー業に励みたいと思います」 「七海ちゃんがんばれー」  サカキが嬉しそうに本名を呼ぶと、水色から矢のようなものが飛んできた。 「うわっ」  すぐさまサカキは地面に倒れこむ。    矢だと思っていたのはどうやらネットのようで、  細く鋭い形状に加工されたネットが、敵に当たると瞬時に開き身動きを取れなくする仕組みらしい。 「容赦ないのかよ……」 「それとこれは別ですので。あと、馴れ馴れしく名前をちゃん付け呼ぶのは止めてください」  気持ちの切り替え上手がヒーローの強さなのかもしれない。  ヒーロー状態の七海は、常日ごろから思っていたサカキの"七海ちゃん"呼びを嫌っていたことが改めてわかった。  水色が続ける。 「あともう一つ言っておきたいことが。 カフェであの武器のことをあなた方は"あれ"と呼んでいましたが 正式名称は"それ"です。お見知りおきを」  "あれ"でも"それ"でもどっちでも良いわー!  しかも"それ"が正式名称なのかい!  と、黒豆団が各々心の中で思っていると、水色がレッドことブルーこと赤田に言う。 「ブルー、やって」 「……だから俺レッドナ」  その後は言うまでもない状態ではあるが、大きな電気と共に黒豆団は力尽きた。  ウツギは腕倒れこみながら時計に目をやる。 「今日の対戦時間は3秒か……」
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