第四章 前編

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「で、おかわりいるのね?」 「はいっ」 「マスター!ココアおかわり入ります!」  居酒屋みたいなノリに聞こえるなと思いつつ桃子を目で追っていると、カフェのドアが勢いよく空いた。  スラっと身長が高く、目力がある中にも優しい光を感じるような視線。  われらが黒豆団リーダーのメイさんだ。  居酒屋店員のようなウエイトレスが駆け寄る。 「いらっしゃいませー。おっメイじゃん!」 「えっ!あんたここで何してるの!?」  アヤが座る席から入口は遠いのだが、はっきり聞こえるほどのトーンだ。  確かにこの状況には驚くだろう。というかこの二人も顔なじみだったのか。  やはりヒーローと黒豆団は深い関係なのかもしれないと思っていると、ウツギとサカキも入ってきた。  二人とも同じように驚いたリアクションを取っているが、サカキだけはテンションが上がっている。  それと同時に、サカキを見るとこの人が元イエローなのかと考えさせられてしまう。  そう考える暇もなくサカキがいつも通りに挨拶をして席に座った。  ここからはいつも通りの会議がスタートするはずなのだが、桃子がいるのでどうやら込み入った会議は出来なさそうだ。  桃子がいなくなった隙を狙ってメイが話を切り出す。 「この前の河川敷でさ、なぜか柳もいたじゃん。あれから問いただしたのよ。なんであんたもあそこにいるんだよって。 そしたら"やられたところを見たくて!"だってさ。 それに"俺がヒーローと一緒にいたら、情報漏らしてるのが俺だとは思われないだろ"って。 ちゃんと考えての行動なのか、適当に話を作ってるのかわからないけどまあそういうことらしいよ」  桃子の足音と共にメイの声が小さくなる。 「はい、抹茶ラテでーす。甘いのは太るから控えた方が良いよ」 「マスター!このうるさいバイトのシフト変えて!」 「うるさいとは何さ!私は可愛い店員よ?それにほら、カチューシャ似合ってるでしょ」  メイが目を細めながらカチューシャをじっと見つめているとマスターが駆け足でやってきた。 「申し訳ございません、そう言われるとは思ったのですが河邑さんが来ないのでね……。  ただ、応急処置ですので。金曜日にはもう一人のバイトが入ってくれることになってますのでそこまで我慢していただければと」 「ちょいマスター!我慢ってなにさ!我慢とは!?」  桃子とマスターの絡みは最近の出会いではできないものだろう。  それも桃子がこのカフェを好きでよく来ているからであるに違いない。  今日は込み入った話はできないので、雑談で時は過ぎていきそうだ。  情報通のウツギが話を切り出す 「レッドも心配ですが、育成のブラウンがヒーローへ正式に入る噂もあるみたいですね」 「あ、噂の一般公募の育成さんね。良く知らないけどそうなんだ。アヤちゃんにも話したことあるっけ」 「はい、最初ヒーローについて紹介されたときに聞きました」 「俺が紹介したときな。そう言えばした気がするな」 「もうそんな噂流れてるんだ♡。私たちヒーローも詳しくは知らないんだけどね」  自然に黒豆団の会話に入ってきた桃子にメイが叫ぶ。 「あんたは仕事しろ!」
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