第一章

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 三人は外観では一流企業のビルに見える建物に足を踏み入れる。    自動ドアを直進すると毎回目が合う受付の女性に声をかける。  「お疲れ、空ちゃん」  受付の大家 空が男に返事をする。  「お疲れ様です、黒豆……ではなくて、株式会社YOKOZUMIさん」  「だから、間違えるなよー。表向きはYOKOZUMIなんだからー」  「すみませんっ、思わず言ってしまうんですよ」    受付を抜けて観葉植物を横目に進むと、別の部屋から溢れ出ている絵画が足場を邪魔している。  踏まないように隙間を抜けていくと、一番奥のドアに株式会社YOKOZUMIのプレートが下がっている。  扉を開けると、目の前に白地に黒文字で"黒豆団"と書かれた横断幕がある。それを背に、黒豆団の3人が各々腰を下ろす。    黒豆団のリーダー横田 芽衣が、コンビニで買った抹茶ラテを片手にテレビをつける。  画面に流れたニュース番組を見て、黒豆団で一番若い宇津木 啓次が声を出す。  「今日は僕達ニュースに流れますかね」  それに黒豆団で最も喋る量の多い榊原 次郎が返す。  「出てもちらっとだけだろうな。でも今日は1分も戦ったから期待はしてみるか」    テレビでは政治の裏金問題についてが延々と流れている。    3人がそれぞれ目をスマホに移し出した時、今日のヒーローの活躍が紹介されだした。  瞬時に3人の視線がテレビに注がれる。  昨夜の活躍を振り返った後に、速報と大きく書かれたVTRが流れ出した。    「あ、今のそうだよな!」  「あれ僕の手じゃないですか!?」  「顔が一瞬映った!もっとかっこよく撮ってくれよー」    各々に感想を言い合うと、ヒーローの活躍映像は終わり天気予報の時間となった。  その瞬間にテレビは沈黙にされてしまった。    「あんたらさ、テレビに映ることは嬉しいことかもだけどさ、本来の目的忘れてないよね?」  「そりゃメイさん、わかってますよ。ヒーローを倒すことですよね」  「それなのにいつも一瞬でやられてることについてどう思ってるわけ?」  「もちろん勝ちたいですよ、でもレベルが違いすぎますって。  こうしてケガだけで帰って来れてるだけでも成長の証ではないですか?ヒーローの配慮かもしれませんが……」  「こうして生きて拠点に帰って来れたのは良い。それが一番重要なミッションだからね。ただ、今日に関しては遊ばれてたでしょ。ウツギ君はどう思う?」    コンタクトレンズを気にしながらウツギが答える。  「最初は良かったです。作戦通りレッドを集中的に狙えました。しかし、グリーンに背後を取られてからは遊ばれてましたね。  今日は日曜日ということもあって観衆が多かったですから、最後は派手に爆発で終わる計画だったのでしょう。  そのシナリオ通りに爆発まで持っていかれた感じですね」    「冷静な分析ありがとう」  メイが抹茶ラテを、壁にテープで張り付けてあるゴミ袋まで歩きながら言った。    自前で作成した小道具が散乱しているレンタルルームに静寂が包み込む。
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