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戦闘準備を整えていると、ヒーローがバイクから降りてこちらに向かってくる。
するとまさかの色合いにサカキが驚きの声を上げる。
「レッドと水色じゃねえか!どういうことだ!?」
するとレッドがこちらに声をかけてきた。
「ケケケ、驚いたカ!レッド様の登場だゼ!」
変な空気が公園を流れる。
少しの沈黙の後レッドが再び声をかける。
「おいどうしタ?レッドだゾ?」
呆れた表情でサカキが答える。
「ブルーだろお前……。なんでレッドの恰好しているのさ」
「何、ばれているだト……。完璧な変装のはずなのニ」
「いや、喋り方でわかるから!」
「盲点だっタ……」
黒豆団のヒーロー呼び寄せ術も子供騙しだったが、
ヒーロー側もまた子供騙しであった。
「なんでレッドなんだよ。おちょくっているのか?」
「そんなわけないだロ。その逆だよ逆、レッドをリスペクトしてんダ。
もうあの人は戦える状態ではなイ。しかしリーダーがいないというのは色々と困るだロ。
そこで一番強くて、レッドにふさわしい名前の"赤田"である俺がレッドに襲名したわけサ!レッドっぽく火も使えるゼ!」
小さな火を吹いて見せたところで、冷静にメイが突っ込む。
「あれ、あんた本名公開してたっけ」
「しまっタ!」
今から本当に真剣な戦いが始める前なのだろうかと、アヤは心の中で謎の心配を始めた。
そしてレッドことブルーに目が行っているが、後ろには水色の姿があることにまだ誰も触れていない。
どうしても気になるのでアヤは声をかけてみた。
「あの、後ろにいるのは、本物の水色さんですか……?」
少し動揺した声だが、いつもより優しめの声で水色が答える。
「はい、その節はご迷惑をおかけしました。これから気持ちを切り替えてヒーロー業に励みたいと思います」
「七海ちゃんがんばれー」
サカキが嬉しそうに本名を呼ぶと、水色から矢のようなものが飛んできた。
「うわっ」
すぐさまサカキは地面に倒れこむ。
矢だと思っていたのはどうやらネットのようで、
細く鋭い形状に加工されたネットが、敵に当たると瞬時に開き身動きを取れなくする仕組みらしい。
「容赦ないのかよ……」
「それとこれは別ですので。あと、馴れ馴れしく名前をちゃん付け呼ぶのは止めてください」
気持ちの切り替え上手がヒーローの強さなのかもしれない。
ヒーロー状態の七海は、常日ごろから思っていたサカキの"七海ちゃん"呼びを嫌っていたことが改めてわかった。
水色が続ける。
「あともう一つ言っておきたいことが。
カフェであの武器のことをあなた方は"あれ"と呼んでいましたが
正式名称は"それ"です。お見知りおきを」
"あれ"でも"それ"でもどっちでも良いわー!
しかも"それ"が正式名称なのかい!
と、黒豆団が各々心の中で思っていると、水色がレッドことブルーこと赤田に言う。
「ブルー、やって」
「……だから俺レッドナ」
その後は言うまでもない状態ではあるが、大きな電気と共に黒豆団は力尽きた。
ウツギは腕倒れこみながら時計に目をやる。
「今日の対戦時間は3秒か……」
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