第一章

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 この空気を居心地悪く思ったサカキが声を張り上げる。  「あーー、ヒーローに勝ちてーよー!」  「じゃあ次の作戦を考えようか」    食い気味でメイがリーダーらしいことを言ったところで、3人が膝の高さよりも少し低いテーブルに集まりだした。    まずはリーダーのメイが今日の戦いを振り返る。    「まず今日の現場にブルーがいなかったのが予想通りね」  次に作戦担当のウツギが目を光らせる。  「昨夜大暴れしてましたからね。ローテーション的に来ないのは予想が当たりました」  そして肉体担当のサカキが大きな声を出す。  「そこまでは予想できたけどよ、問題はグリーンだよな!」    3人が"今日の作戦!!"と書かれた紙に視線を集める。  「昨夜はグリーンもいましたからね。レッド、ブルー、グリーンの布陣でした。レッドはリーダーなので出勤するとして、ブルーとグリーンは疲労を考えて出勤しないと思っていたのですが」  「最初会った時はレッドと水色だけだったからな。作戦成功かと思って疲労の溜まっているレッドに集中攻撃を仕掛けたよな!水色はいつも通り一歩下がっていたしな」  「でも実はグリーンも現場にいたと。背後を取られてノーガードで殴られて最後はレッドの見せ場、必殺技ヒーローエルボーでジエンドと」  「まんまとヒーローの作戦に嵌った感じですね」    再び静寂が部屋を流れ始めた。隣の部屋から水道の音がはっきりと聞こえる。  重い空気を払拭するようにサカキが言葉を発する。  「でもさ、ヒーローなんだから正々堂々と戦えって話だよな。なんで不意打ちなんてしてくるんだよ」  冷静にウツギが答える。  「悪党を倒すのが真の目的ですから。それに不意打ちも立派な作戦ですし、ヒーローが使ってはいけない卑怯な作戦でもないです。  それに日曜ということもあって、最後は必殺技でド派手に決めたかったので、そこまでの過程は何でも良かったんじゃないですか?」  
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