もう少しだけ

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   辞めさせるなら辞めさせればいい。金を稼ぐための手段なんて他にもある。自分の人生に於いては、些末な事だ。そんな風に考えながらも、久しぶりに近所の公園にでも行こうと思い至ったのは、こんな時にありがちな、罪滅ぼしの心理が働いたからに違いなかった。天気が良いことも相まって、一日中罪悪感に苛まれる事を避けられるのではないかと淡い期待を抱いて。  少し冷たい風が胸に心地いい。透き通った秋の空の青や横を抜けていく車の列。役目を終えた寂しげな畑や遠く向こうの鮮やかな山々。排気ガスのツンとした匂い。電線に並ぶ小鳥の声。手当たり次第に頭の中で文章に変えながら、歩いていく。  公園に近付くと聞こえて来た弾む声に「おや?」となった。昼と呼ぶには遅い時間ではあるが、学校が終わるにはまだ早い。  職員会議でもあったのだろうかと思いながら入口を覗くと、予想に反した賑わいで、そこにちらほらといる大人達を見て、漸く今日が休日だという事に気がつく。その場で佇み、引き返そうとも考えた。が、罪滅ぼしの事もある。普段目にすることのない景色を眺めるのも大事な事だと、一つ罰を受けてやる気持ちで園の中へと足を踏み入れた。  幸い不審な目を向けられるような事はなく、黄色く染まった銀杏の木の下のベンチへ腰を下ろす。広場からやや離れた落ち葉まみれのベンチは陰気さを纏っていたが、自分には相応しい場所に思えた。  砂場には、歩くのに辿々しさが残る年頃の女の子とその母親。ジャングルジムには、もう少し年上の数人の子供達。そこから少し離れたところに小さく集まった小学生の一団がいて、何をしているのかと思えば、互いにつむじを向かい合わせてゲームに没頭している。
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