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暇でたまらないから、テキストファイルの外に出てみた。
いや、驚いたんだよ、自分でも。そんなことできると思ってなかったんだって。暇すぎて試してみただけだったんだ。
浮かんでいる、「小説_題未決定.txt」をつかんで、柵から身を乗り出す要領で乗り越える。デジタルな世界で、こんなアナログな方法がまさか通用するとは・・・・・・。
外に飛び出すと、そこは「小説」というフォルダの中だった。「夢の世界を超えて(仮).txt」、「冒険小説.txt」、「超能力.txt」、「アイデアメモ.txt」などが並んでいる。
掌編も長編も、アイデアもプロットも本文も、全部ここに置いてあるみたいだ。
俺はこれらのファイルをひとつひとつのぞいてみることにした。もしかしたら、俺の物語の前日譚とかがあって、俺のことを知っている人がいるかもしれないしな。
「夢の世界を超えて(仮).txt」に飛び込む。そこには、三人の女の子がいた。全員俺と同じくらいの歳のようだ。
そのうちの一人のショートヘアの女の子が、驚いたように言った。
「あれ・・・・・・あなたはこの話の新しい登場人物?」
「それがよくわからなくてさ。別のファイルから来たんだけど」
俺はここまでのいきさつを簡単に話し、「御門ケン」という名前を聞いたことがあるか尋ねた。
「それは気の毒に。でも、あなたのことは聞いたことないの」
「そうかあ・・・・・・。そういえばここはどんな物語なんだ?」
「ここは、夢の中に入れる能力をもった主人公たちが謎を解き明かしていく話よ。わたしがその能力者で、あとの二人はわたしの仲間たち。でも、まだ主人公となるチームと話の設定が決まっているだけなのよ」
彼女の話を聞いて、俺は不安になってきた。俺の物語よりは色々決まっているものの、この物語もなんとも中途半端な状態で放置されている。ファイル名に、(仮)ってついてるし。
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