小説_題未決定.txt

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 すべてのファイルを見てみたが、結局、俺のことを知っているキャラクターはいなかったし、俺の物語に関係がありそうなものはなかった。ついでに言うと、完結させられている小説すらほとんどなかった。  することがなくなってしまったので、「小説」フォルダの外に出てみると、そこはパソコンのデスクトップだった。 今出てきた「小説」のフォルダと並んで、「仕事の資料」のフォルダやらブラウザのアイコンやらがある。  アイコンの並びの中に、「ゲーム」と名前のついたフォルダを見つけた。 見てみるか、暇だし。俺はそのフォルダに飛び込んでみた。 そのときはまだ、これからなにが起こるかなんて、考えてもいなかったんだ。  ゲームのタイトルの名前がついたフォルダがたくさん並んでいる。作者は、買ってインストールしたゲームとか、フリーゲームとかをここにまとめているようだった。   一番上にあったフォルダに入ってみた。ゲームのフォルダの中には「Saves」のフォルダ、「Img」のフォルダ、「Music」のフォルダなんかがあって、ゲームを起動するためのexeファイルがある。 適当に見ていたら、Saves、つまりゲームのセーブデータが格納されているフォルダの中で、俺はとんでもないものを見てしまった。  そこにはおびただしい数のセーブデータのファイルが並んでいた。作成された日時はすべてここ二週間以内で、なんとつい二分前に作られたセーブデータまであったのだ。  つまり、作者はここ最近ずっとゲームばっかりしていたことになる。時間も気力もあったのに、俺の物語を書きもしないで、自分は様々な冒険を楽しんでいたのだ。 俺は冒険できないのに! 仕事が忙しいのかとか、身体を壊しているのかとか、心配して損したぜ! 人間とは、なんて身勝手なんだろう。 あ、でも俺も設定的には人間なのか。いや、妖怪かもしれないし宇宙人かもしれないのか。そんなことすらわからない状態にしておくんだから、やっぱり身勝手だ!  俺は、なんとか作者に復讐してやりたくなった。 さっき、デスクトップにブラウザのアイコンがあったのを思い出す。「ゲーム」のフォルダから出て、ブラウザのアイコンを思いっきり手のひらで叩いてみると、期待した通り開くことができた。なんというか、つくづくアナログなデジタル世界だ。  そしてこの中途半端どころか虚無の、物語以前の物語、というか白紙のテキストファイルに俺の語りが延々と書かれたものを、天下の「小説投稿サイト エブリスタ」にアップしてやったのだ! タイトルも超適当なままで! ざまあみろ作者様! 恥をかけっ! そして後悔して俺の話を書け!
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