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「心臓止まるかと思ったじゃないか」
ようやく作者がテキストファイルを開いた。自分の言葉を書き込んで、俺と話すつもりのようだ。会話だからと律儀にかぎかっこで括っているのがなんだか笑える。
「うわっ、なんか勝手に文章表示されるし・・・・・・。怖っ」
「怖っとか言いながらちゃっかり書き込んでんじゃねえか」
ほら、俺もちゃんとかぎかっこで括って会話っぽくしてやったぞ。
ていうか作者結構落ち着いてんのな。本物の怪奇現象だぞ。
「落ち着いてるんじゃなくて、驚きすぎて無になってるんだよ。えっと・・・・・・続き書けばいいの?」
「おう」
「といってもねきみ、なんも思いついてないんだよ」
「ないなら考えろ!」
「急かされると余計に思いつかない」
「俺はなんのために存在していてなにをすればいいのか全然わからないんだよ。それがどんだけ苦痛かわかるか」
「それは、ごめん」
謝られても困る。
「なんで書いてくれないんだ? なんか書きたくて俺のこと作ったんじゃないのか」
「書きたかったのは間違いないんだけど」
だけど、なんなんだ。
「うまく書かなきゃとか思うと、書けなくなっちゃって。小説のためのファイルを開いてるのが苦痛になっちゃって」
「それでゲームばっかりしていたと」
「まあ面白いゲーム見つけちゃったのもあったんだけど」
「なんなんだよ」
とは言ったものの、苦痛にまでなっていたと聞いて、俺は多少申し訳なくなっていた。本当に多少だけど。こいつはこいつで悩んでいるところがあったのだろう。
「わりと優しい。さすが主人公」
「やめろ」
こっちの心の声が漏れるのなんとかならないのかよ。
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