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戻ってきた源人にそう言うと、源人は一瞬立ち止まって驚いたようにこちらを見る。それから照れを隠すようにそっぽを向き、また私の前に座った。
「うん……僕も好き」
「大好き?」
「……大好き」
「何その間」
「恥ずかしいの! もう急に言われたら、戸惑うじゃん!」
「先に言ったのはそっちだけどね」
「え、僕言ったっけ?」
私はそれを聞いて、無自覚かと心の中で呟く。
「天然人たらし……」
「えっ?」
私は枕替わりにしていたクッションで顔に被せると、火照る頬を必死に冷ました。冬で冷たいはずのクッションなのに、全然頬の熱が取れない。
「言わなければよかった……」
「え、何で? 嬉しかったよ? 新年早々、元気出た。良い一年になりそう」
「別れるかもしれないのに?」
「えっ、別れちゃうの!? 僕は全力で拒否するよ」
「別れないよ。別れる訳ないじゃん」
「ビックリした……結婚も考えてたのに、別れようって言われたら僕ちょっと立ち直れないよ……」
またさらりと恥ずかしいことを言う。私は結婚も考えてるんだ、と心の中で呟くとニヤニヤを隠すようにクッションで口元を隠した。
「顔真っ赤だね」
「真っ赤にさせたのは茜だけどね。そう言ってる茜も真っ赤だよ」
「うん、知ってる。お互い真っ赤だね」
私はその言葉を聞いて、くすくす笑う。源人もくすくす笑った。丑三つ時があっという間に幸せな時間帯に変化した瞬間だった。
「まだ、起きてよっかな」
源人が言った。私は嬉しそうに「うん」と言うと、しばらく気恥ずかしい時間を過ごす。もう少しだけこのままで。
もう少しだけ。
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