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「何で亡くなった人になると怖くなるの? 生きてる人だと大丈夫なのに。同じ人じゃん」
「亡くなった人が急に目の前に現れたらそりゃ怖くなるでしょ」
「じゃあもし私が死んで」
「縁起でもないこと言わないでよ」
「幽霊になった私が目の前に現れたら、怖い?」
源人はじっと私の瞳を見つめると、何かを想像しているのか眼球を上に向け、それから無言になる。テレビの騒がしい音だけが部屋中に響き、私はテレビに目を向けることもなく、じっと源人を見ていると、源人がかぶりを振った。
「怖くない」
「何で?」
「だってもし仮に茜が死んでしまったとして。それで僕の前に幽霊として現れたら、それは幽霊になってでも僕に会いに来てくれたってことでしょ? それって凄く嬉しいことじゃん。大好きな人が会いに来てくれたんだから」
さらっと恥ずかしいことを言う。私は「ふーん」と言いながらニヤニヤすると、クッションに頭を預けた。照明がチカチカするほど眩しい。
「私は大丈夫でも他の人は怖いんだ」
「そりゃぁ、まぁ……」
源人はもごもごしながら私に背を向けると、テレビの画面をじっと眺める。丁度、深夜のお笑い番組が元旦スペシャルで放送されていて、それを見てくすっと笑っていた。
「私も、茜が幽霊になって会いに来てくれたら嬉しい」
「……さらっと恥ずかしいこと言うね」
「先に言ったのは茜でしょ」
「いや、まぁ……ありがとう」
「んふふ、どういたしまして」
私はローテーブルに置いてあるおつまみを摘まむと、口に運ぶ。チーズが口の中で程よく溶けて、絶妙な味わいだった。深夜にチーズだなんて罪悪感しかないが、元旦ぐらいは別に良いだろう。神様もきっと許してくれる。
「丑三つ時ってさ、怖いって言う人もいるけど、本当は幸せな時間なのかもしれないね」
「え?」
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