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「家の近くにおいしそうなパン屋さんを見つけてね。
朝からやってるから買ってきたんだ。
いろいろ目移りしちゃって、買いすぎたから、凪も興味あるのあったら食べてくれるとうれしい。」
中庭の日陰のベンチを確保して、智風がパン屋の袋を覗かせてくれる。
確かにどれもこれもおいしそうだけど。
とりあえず、お昼と食べないことにはね、と思って、自分のお弁当も開いた。
「さっきの話が途中だったね。」
智風に言われて、私は首を傾げる。何が途中?
「実はさ、あの限定パフェの話って、同じ学部の女の子から聞いたんだよね。
今朝、その子に会ったから、昨日食べに行ったよって話したわけ。
そしたら、誰と行ったの? 彼女できたの?って話になったから、ちょっと気になってた子がいてアプローチしてたら彼女になってくれたんだって言った。
それで、その子とパフェを食べたんだっていうのも話した。」
「嘘つき。」
そんな作り話をしたのかー。
パフェを一緒に食べたってところしか合ってないし。
「え、僕、嘘はついてないよ?」
それなのに智風はきょとんとしてそんなことを言う。
「どこが!?」
私は思わずツッコんでしまう。
「え、だってさ。凪のこと、ちょっと気になってたのって本当だし、僕からアプローチして恋人になってって頼んだし、彼女にもなってくれたでしょ。」
そこで言葉を切って、智風は私の耳元にすっと口元を寄せる。
「契約上の……はカッコに入っているけど、彼女、でしょ? ほら、嘘ついてない。」
ニヤッと悪戯っぽく笑う智風は、何だかたちが悪い。
「話した子はさ、学部の中でも噂好きで有名なんだよね。
さっそく広めてくれたみたいだね。」
智風は多分、それも狙って話していたんだ。
でも、私はちょっと引っかかっていた。
「ねぇ、智風。その人って、智風と一緒にパフェ食べに行きたかったんじゃないの?
だからそういう話題を振ってきたんじゃないの?」
だとすると、今朝、智風からそんな話を聞かされて、心中穏やかじゃないだろう。
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