1 6月の限定パフェ

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「家の近くにおいしそうなパン屋さんを見つけてね。 朝からやってるから買ってきたんだ。 いろいろ目移りしちゃって、買いすぎたから、凪も興味あるのあったら食べてくれるとうれしい。」 中庭の日陰のベンチを確保して、智風がパン屋の袋を覗かせてくれる。 確かにどれもこれもおいしそうだけど。 とりあえず、お昼と食べないことにはね、と思って、自分のお弁当も開いた。 「さっきの話が途中だったね。」 智風に言われて、私は首を傾げる。何が途中? 「実はさ、あの限定パフェの話って、同じ学部の女の子から聞いたんだよね。 今朝、その子に会ったから、昨日食べに行ったよって話したわけ。 そしたら、誰と行ったの? 彼女できたの?って話になったから、ちょっと気になってた子がいてアプローチしてたら彼女になってくれたんだって言った。 それで、その子とパフェを食べたんだっていうのも話した。」 「嘘つき。」 そんな作り話をしたのかー。 パフェを一緒に食べたってところしか合ってないし。 「え、僕、嘘はついてないよ?」 それなのに智風はきょとんとしてそんなことを言う。 「どこが!?」 私は思わずツッコんでしまう。 「え、だってさ。凪のこと、ちょっと気になってたのって本当だし、僕からアプローチして恋人になってって頼んだし、彼女にもなってくれたでしょ。」 そこで言葉を切って、智風は私の耳元にすっと口元を寄せる。 「契約上の……はカッコに入っているけど、彼女、でしょ? ほら、嘘ついてない。」 ニヤッと悪戯っぽく笑う智風は、何だかたちが悪い。 「話した子はさ、学部の中でも噂好きで有名なんだよね。 さっそく広めてくれたみたいだね。」 智風は多分、それも狙って話していたんだ。 でも、私はちょっと引っかかっていた。 「ねぇ、智風。その人って、智風と一緒にパフェ食べに行きたかったんじゃないの?  だからそういう話題を振ってきたんじゃないの?」 だとすると、今朝、智風からそんな話を聞かされて、心中穏やかじゃないだろう。
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