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大学を起点にすると、私の家の方が近い。
だから、智風は私の家まで一緒に行くと言って自転車を漕ぎ始めた。
車通りも人通りもさほどではない道では、併走しておしゃべりをした。
「凪の弟……えっと、海斗くんだっけ? 家庭教師はいつスタートしたらいい?」
「海斗には伝えたんだけど、今週末は大会があるから、できたら来週がいいって言ってた。
直接連絡取ってもらってもいいんだけど、最初はやっぱり私が仲立ちした方がいいよね。」
私の実家は隣の県で、電車で2時間半ほどかかる。
海斗の家庭教師は、リモートでお願いすることになっている。
どんな方法で勉強を進めていくかは、もう海斗と智風に任せることにしていて、智風からは了承を得ていた。
「そうだね……。本格的にスタートするのは来週として、最初の顔合わせだけでも先にやっておきたいな。」
「夜なら海斗、家にいるだろうから、それでもいいんだけど、私、バイトだしね。」
終わってからじゃ、智風と合流するにはさすがに遅い。
「バイト……何時終わり? 居酒屋だったよね?」
「22時に店閉めて、大体22時半過ぎに部屋に上がるかな。」
「部屋に上がる?」
智風が私の言葉に首を傾げる。
「あぁ。私のバイト先の居酒屋の二階に私が借りている部屋があるの。
そこに帰るから、そんな言い方になっちゃった。」
「そうなんだ。それなら夜遅くても安心だね。」
マサさんみたいなことを言うな~って思った。
こんな私でも女の子だと思っているのかとくすぐったい気持ちになる。
まぁ、契約彼女なんだけど!
「ここがその居酒屋。」
私は「やおよろず」の前で自転車をキュッと止めて自転車から降り、脇にある自転車置き場に向かう。
その間、智風は店の前で様子を見ているようだった。
「じゃ、バイトだから。海斗との顔合わせのことは、またあとで相談させて。」
「あぁ。じゃ、またね。」
智風はにっこりと笑うと、自転車を漕ぎ始めた。
よく見ると、自転車を漕ぐ姿もカッコいい。
イケメンは何をやってもカッコいいんだな。
そんなどうでもいいことを考えながら、私は裏口から店の中に入っていった。
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