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マサさんとは、不動産屋さんの紹介で知り合った。
私の事情と要望を聞いた不動産屋さんが、物件の見学と同時に大家さんに会ってみないかと持ちかけたのだ。
訳もわからぬまま、言いなりになって、「やおよろず」に連れてこられた。
事情を聞いたマサさんは、ニカッと笑ってこう言った。
「二階が貸部屋になってる。
3部屋のうち1部屋が空いてる。
他の2部屋は学生一人と社会人一人。
どっちも男だけど、いい奴らだから、お嬢ちゃんさえよければ貸すよ。」
家賃が破格だった。
部屋はワンルームでこじんまりしたものだったけど、台所もちゃんとしていたし、お風呂と洗面所は別だった。
それに外見よりも部屋は小綺麗。
一目で気に入った私は、
「是非、お願いします!」
とマサさんに頭を下げた。
「ま、1階が居酒屋なもんだから、ちょっと夜はうるさいんだけどな、それは勘弁な。」
家賃が安いのはそれが理由のようだった。
「まったく構いません。」
「さっきの話だと、生活費は自分で稼ぐらしいけど、バイトとかは決まってんの?」
「これから探します。私、中学からずっと陸上やってて、大学でも続けるつもりなので、そっちとうまく時間を合わせたいんで、何がいいかは考え中です。」
空き時間を利用してだと、単発のバイトを組み合わせて稼ぐしかないかなと思っていた。
平日は練習後の夜。
週末も練習時間を避けて入れないといけないわけだし。
「ふーん。」
マサさんは、私の話を聞いて、何やら考える様子だったけど、またニカッと笑って言った。
「大学入ったら、バイトどうしたか、また教えてな。」
私は特に疑問も抱かず、はい、と答えた。
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