1 6月の限定パフェ

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「ここが今日の目的地。付き合ってくれてありがとう。」 なかなか賑わっているカフェの一角の席に案内されて、二人で向かい合わせに座ると、まずは天野くんにお礼を言われた。 「何の目的、なの?」 「これ。」 天野くんは冊子のメニューに挟まれていたプラ板メニューを引っ張り出す。 そこには、 『カップル限定! 恋人の日記念パフェ』 という見出しが書かれた大きなチョコレートパフェの写真が載っていた。 「パフェ?」 「そう。凪は甘い物、大丈夫?」 「嫌いじゃないけど……私、手持ちがあまりないから頼めないよ?」 そんなことを白状するのは、ちょっと恥ずかしくて天野くんから目を逸らしてしまう。 「付き合わせてるのに払わせるわけないでしょ。 ここは当然、僕のおごり。」 「えぇ?」 それは……気が引ける。 ろくに知らない天野くんにおごってもらうって、嫌なんだけど。 「飲み物、何頼む?」 そんな私の気持ちなどまったく知る余地もなく、天野くんはドリンクのページを開く。 「だからね、私は手持ちがないから水でいいの。頼めないの。」 「だからさ、僕のおごりだから、好きなの頼んで欲しいんだけど。」 笑顔なんだけど、断固として譲らなさそうな天野くんの様子にため息をつく。一番安い飲み物がブレンドコーヒーだったから、それを頼んだ。 「今日、6月12日って、恋人の日、なんだって。知ってた?」 パフェとコーヒー二つを注文した天野くんが、そんなことを聞いてくる。 私はぶんぶんと首を横に振った。 「僕もね、知らなかったんだけどさ。 ここの店が6月12日限定、しかもカップルで来た客にしか出さない限定パフェを出すって知って、どうしても食べたくなってね。 相手を探してたんだ。」 「……天野くんなら喜んで一緒に来てくれる女の子、周りにたくさんいるでしょうに。」 天野くんのモテっぷりを思い出して思わずそう言ってしまう。 何で私なんだ?? 「そういう子と来ちゃったら、その子が特別だって勘違いさせちゃうかもしれないでしょ? それは困るんだ。そんな面倒くさいことは避けたい。」 天野くんは真面目な顔でそう言う。 「何で私?」 私は一番知りたかったことを聞いてみることにした。
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