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「凪は、僕に興味ないでしょ? 恋愛事にも興味なさそう。違う?」
確かにその通りなので肯定の意味で軽く頷いた。
「僕さ、彼女がいないからって、しょっちゅう告られるんだよね。
自慢するつもりじゃないけど。で、そんな気はないからって断るでしょ?
でも彼女がいないなら、待つから考えてって結構食い下がられるんだよね。ほとんど口もきいたことない人だよ?
ということは、相手は僕の外見だけ見てそんなこと言ってくるわけだよね。
それもいい加減嫌になってさ。
だから、彼女役をやってくれる人を見つければいいんじゃないかなって思ったわけ。」
モテる男は辛いよってわけか。
「下手に好意を持たれている相手だと、そんな役頼んだら期待しちゃうでしょ。
そのうち本当の恋人になれるんじゃないかって。
それだと都合が悪いんだよね。
僕に興味なくて、恋愛事にも興味ない人がベストなんだよなって思ってたんだ。」
天野くんはそこで私ににこっと笑いかけた。
「凪ってさ、僕と授業1コマかぶってるの、知ってる?」
「知ってるよ。法学部の授業でしょ?」
「そう。その時にさ、大あくびしてたときにたまたま僕と目が合ったの、覚えてる?」
……そんなことあったっけ? 講義は1コマ目だからまだ覚醒してなくて、いつも眠いのは間違いなんだけど。
首を傾げる私に天野くんが教えてくれた。
「5月の終わり頃だったと思うんだけど。
ばっちり目が合ったんだけど、まったく気にする様子もなくてさ。
割とそういう場面で目が合った女の子って、顔赤くして焦ったりする子が多いから、堂々とあくびをし続ける子って、珍しかったんだよね。」
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