雪国と少女

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雪国と少女

嫌なことが沢山積み重なって、私の心は限界を迎えていた。 大学進学を機に上京して、そのまま就職。そこそこ良い仕事に就いているはずなのに。 ここに来て私は何をしたかったんだろう。このあとどうしていくつもりなんだろう。何の為に生きているんだろう。 全部ぜんぶ分からなくなって、私は全てを捨てて飛び出した。 行き先なんて深く考えずに飛行機に飛び乗り、いつの間にか私は北国にいた。 (雪だ!) 空港から出て白銀の世界を目の当たりにしたとき小さな私が生まれた。彼女は一面に積もった雪に大喜びしていた。 そういえば小さい頃私は雪国に憧れていた。私の故郷には積もるほどの雪なんて降ったことがなかったから、雪国の絵本を何度も読んでいたっけ。 一歩踏み出せば、少し凍った雪がシャクっと音を立てる。冷たさが靴を通り抜けて指先に触れた。 その間にも小さい私は雪の上で踊り回っている。無邪気な笑顔で、寒さなんて知らないみたいに。 私はいつまであんな風に笑えていただろう。いつからちゃんと笑えなくなったんだろう。 (雪だよ!こんなにたくさん積もってるなんて夢みたい!) こっちにおいでと小さな少女が手招きしている。 いつまでも雪の前で立ち尽くす私を見かねた彼女に手を引かれ、雪の上に駆け出した。
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