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エマージェンシー
「……こちら、ボイジャー・α。司令室。エマージェンシー。主エンジンが故障した」
その知らせが飛び込んできたのは。ボイジャー・αが帰還の途について三年目だった。
「エンジン故障?」
司令室が一気に騒がしくなる。
「エンジンデータも同時に送られてきています!」
「解析急げ! αとの次の交信時間は何日後だ?」
「約一日半です!」
「それまでに、対応が……考えつくか?」
「αからの解決策も送られてきてますが!」
「そちらも全員が把握できるようにしろ!」
司令室の一角を占めるAIチームは、エンジンには直接携わらないが……。
「Dr.リー! タイプ・αにエンジン関連のデータ書き換え能力はあったな!」
司令室のトップから、Dr.リーのインカムに声が届いた。
「ええ……でもこのデータ……」
Dr.リーはボイジャー・αから送られてきたデーターをチェックしながら、嫌な感覚が自分を支配していくのを自覚していた。
「どうかしたのか?」
「もしかして……、メインエンジンが壊れているだけじゃなく、タイプ・αとエンジンの制御コンピュータの接続がうまく行ってない?」
「まさか……こういう時のためのAIなのにか?」
Dr.リーにはインカム越しに、責任者が頭を抱えたのが見えた気がした。
そして結局、ボイジャー・αのエンジンを修復する手段は見つからなかったのだ。
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