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会議
数ヶ月後、とあるビルの一室で会議が行われていた。ボイジャー・αの息の根を止める会議が。
「それでは、ボイジャー・αプロジェクトの停止とプラネット・ナイン探査船、ボイジャー・αの廃棄を決定します」
議長の女性が演台に立って宣言した。
「プラネット・ナインの観測データは全て地球に送信させています。ボイジャー・αが持っている生データは魅力的ですが、エンジンが故障した以上仕方ないですな」
「AIコントロールソーラーセイルのデータも同様です。セイル自体はプラネット・ナインに到着時に廃棄していますから、セイルの駆動データが確保された以上、ボイジャー・αを廃棄しても何の問題もありませんしね」
あちこちから諦めの声がする。
「もう、どうにもならないのですか?」
「Dr.リー?」
「ボイジャー・αに乗せているAIは唯一宇宙空間で航行した体験を持つAIです。これを捨てるにはあまりにも惜しすぎます!」
「ですが、ボイジャー・αの現在地点は三百五十天文単位、回収に行くだけの技術力はまだ人類は持っていません」
「今から作れば!」
「それに何年かかります? ボイジャー・αはある空間の一点に止まっているわけでもありません。たとえエンジンが壊れて加速ができなくなっても、惰性で動き続けます。それを追尾し回収しに行くのがどれほど大変か、Dr.リーにもご理解いただけるはず」
議長の言葉に、Dr.リーは唇を噛んだ。
娘になんて言おう?
自分がそう考えているのがわかって、Dr.リーは心の中で苦笑した。
結局私は、人類のためのとか、科学の発展のためとかじゃなく、個人的な感情で物事を決めようとしている。
もう一人の子供を、失いたくないって、それだけ。でも、そんな理由ではこの会議をひっくり返すこともできもない。
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